こんにちは、LCA生の川口です。今回のテーマは「器」。

「器」と初め聞かされた時、正直僕は興味がありませんでした。『器って、あの「有田焼」とか「備前焼」とかのうつわでしょ?』って。

ただ細金さんは、そんな僕らの思考を先取るように、講義に入る前にこうお話しされました。

「好きか嫌いか、興味があるかないかというのは今までの体験上からきているはずなので、その外側にも自分の興味が広がる世界があるかもしれないと思わないと、好奇心が広がっていかない

確かにその通りだな、と思います。食わず嫌いをせずに、好奇心を持って体験してみること、自分の世界って広がっていきますよね。

この記事を読んでくれているあなたにも、「器」の魅力が少しでも伝わればいいなと思っています。それでは早速、めくるめく器の世界をご紹介していきましょう!

大前提「豊かさとは教養である」

細金さんが器を好きになったキッカケのお店に、京都の『御料理 はやし』というお店があります。そこの大将がこう言っていたそうです。

「今の(ITの社長などの)お金のある若い人たちは、お金だけあっても、味や器、そこに流れている背景がわかっていないから、かわいそうだ」

同じお金をかけて同じ食事をしていても、器とはどういうものなのかわかっていて食べる食事と、そうでない食事では、豊かさの感じ方が全然違う。

お金を持っているからいいことができるんじゃなくて、教養があるから豊かさを感じられる。教養がないと豊かさを感じられない世界がある。

細金さんは、そのことに器やワインの世界を知ることで気づいたそうです。その気づきが実践セミナーでの話の基盤を作っていたんですね。

日本の陶芸史は中国のパクリだった!?

日本の陶芸史をたどると、最初から最後まで中国のパクリなのだそうです。中国で出来上がった技術の二段ぐらい下をずっと追いかけて、中国に憧れて真似してきた歴史なんだとか。

奈良時代には中国の唐三彩(下図左)を真似た、奈良三彩(下図右)のような器がありました。

確かに素人目に見てもなんとなく中国の劣化版なんだなとというのが伝わってきますね。

そして鎌倉時代には高火度での焼締めが始まり、この時期に日本の代表的な産地である「日本六古窯(にほんろくこよう)」と呼ばれる、瀬戸、常滑、丹波、備前、越前、信楽の窯が始まったとされています。

ちなみに左下の信楽焼のツボはかのスティーブ・ジョブズがコレクターの方に「10億円でもいいから譲ってくれ」と頼み込んだという逸話があるそうです。しかし、コレクターの方は「値段じゃない」と言って断ったそう…!すごい世界ですね。

室町から戦国時代が日本の陶芸史のターニングポイント

日本の陶芸史は室町時代から戦国時代にかけて一気に進化しました。なぜならこの時代に「お茶」の文化が花開いたからです。

ざっくりとした流れはこんな感じ。

  • 室町時代の8代将軍、足利義政の茶道指南だった村田珠光(ムラタジュコウ)が、侘び寂び文化の象徴でもある侘び茶を創始。
  • 豊臣秀吉の時代にその豪華絢爛な価値観と逆行するように、その弟子の千利休が、侘び寂びの文化を極致へ高める。(そのため政治的に敵対し、のちに秀吉に殺される)
  • 千利休の後、古田織部(フルタオリベ)が中国にも他の国にもない日本独自の焼き物を作り上げる。それは日本の陶芸史の中でも、後にも先にもない革新的なことである。

そしてこの時代のもう一つの特徴的な事件が、秀吉の朝鮮遠征。日本は敗れたものの、朝鮮の技術者を捉えてきたことで「磁器」の生産が始まりました。

これが日本でも有名な「有田焼」の始まりだと言われいてます。

江戸時代から個人の作家性が重宝され始める

江戸時代に入ると、色絵といって磁器に絵を描く人たちが現れ、それまでの「どういう風に作ったか」という文化から、「誰が作ったか」という文化に変わっていきました。

そしてそのはしりになったのが、野々村仁清(ノノムラニンセイ)という人物でした。

この人が自分の作品に作家名を彫ったことで、ここから作家モノという概念が始まっていったそうです

なお、『なんでも鑑定団で歴代最高額』の値をつけたのは、同時期の作家、酒井田柿右衛門(サカイダカキエモン)の壺で、その額なんと5億円!(ドヒャー)

尾形乾山の登場により作家モノの価値が変わる

江戸中期になると、野々村仁清の流れを受けた尾形乾山(オガタケンザン)が、初めて器をキャンバスに見立てて、絵や書を書くようになりました。

実は細金さんが初めて「器」に魅了されたのが、この尾形乾山の作品だったそうです。「こういった出会いがあると、一気にはまってしまうのかもしれないですね」とお話しされていました。

すごいですよね。お蕎麦が器一つでこんなにも神々しく感じるなんて。素人の僕でもそのすごさを感じられるほどでした。(いつかこの器でお蕎麦を食べてみたい)

ちなみにかの有名な北大路魯山人はこの尾形乾山の影響を色濃く受けているそうです。

細金さんによる器の鑑賞の仕方レクチャー

鑑賞力が存在する

絵画とか音楽って個人の好き嫌いが色こく反映されますよね。人の感性というのは強要できるものでないのですが、「鑑賞する力の差」というのは間違いなく存在しているのだそうです。

なぜなら日本人の器好きは、入口こそ違えど必ず最終的に全員「井戸茶碗」が好きになるようで、そこに辿り着くには鑑賞力無くしてはいけないからなのだとか。

井戸茶碗(いどちゃわん)は李朝の時代に製作された高麗茶碗の1つと言われています。当時、日本の茶人に大変好まれた茶碗であり、「一井戸 二楽 三唐津」と言われた程の名器です。(茶道具辞典より)

大井戸茶碗 銘 蓬莱(朝鮮時代、16世紀)

こちらのサイトでは「井戸茶碗のこの姿こそが日本文化において規定される美の全き顕現なのである」と紹介されています。う〜む、わからん。

鑑賞力を高める四つの方法

そしてその鑑賞力は次の4つの過程によって磨かれていくそうです。

  1. より広く見る
  2. より深く見る
  3. 名品により多く触れる
  4. 横展開の感性を研ぎ澄ます

この話は器に限らずいろんなことに応用できる話だなと思いました。

1番は、例えば備前だけを見ていると備前の良さがわからないということ。

ジャンルの垣根を超えていろんなものを鑑賞することで、視野が広がるということがありますよね。それまで見えていなかった他との違いが見えるようになるんでしょうね。

2番は、純粋にそのことについて深掘りするということ。広く浅く、ではなく、広く深くが重要ということ。

そして3と4。名品と呼ばれるものを横展開でバッと鑑賞すると「グッと」心が掴まれる体験があります。

この実践セミナーで細金さんが魯山人展を紹介してくださったのですが、僕はそのあとその魯山人展に行ってみました。

この実戦セミナーである程度の流れを知っていたということもあり、魯山人が「器は料理の着物である」といったことの意味が、やはり実物を見ることによって、なんとなくですがわかった経験がありました。

器の鑑賞の仕方に見る日本人独特の5つの感性

最後に、器に対しての日本人の感性は、外国のそれと比べてとてもユニークなものである、ということを学びました。

こうやって改まって勉強して見ると、日本人の美意識ってとても不思議で、自分の中にそれを感じる遺伝子があることに、なんだか誇らしくなりました。

土味(つちあじ)

土の持つ個性へのこだわりを楽しむ感覚です。外国にはこの意味を指す言葉がありません。

唐津や志野といった、地域による土の成分が違うため、同じものを作っても出てくるものが変わってきます。

唐津土に出る「ちりめん皺」呼ばれる削り跡

景色(けしき)

焼き物は二度と同じものが作れません。一回窯の中に入れてしまうと何が出てくるかは神様しかわからない世界。

作家さんは出来上がったものが気に入らなければ全部割ってしまうそうです。窯の神様に天工手腕を振るって頂ける様に、精一杯の準備する事しか出来ないのだとか。

そのほかにも「焦げ」や「雨漏り」などがあり、経年劣化によって出てくる器の表情にも価値を置くところが日本人独特の感性と言えるのではないでしょうか。

手触り(てざわり)

表面の手触り。ざらざら感、感触、重さ。

口についた感じやざわつき、吸い付きまでが、鑑賞対象になりえます。この手触りによって、なんと日本酒の味が変わってしまうのだとか。

細金さんのお店で出している人間国宝「加藤孝造」さんのぐい呑み

口に当てた瞬間に、「ハッ」と思うほどざらざら感が違うそうです。(飲んでみたい)

映り(うつり)

それ自体でなくて、器が相手を迎えに行って、初めて完成されるもの。

花を活かすために花入は控えめなものを選んだり、茶の緑を活かすために、びわ色井戸茶碗や、黒
織部を選んだりします。

左の二つは、お花あっての器、器あってのお花って感じがします。一方の有田焼は、お花と喧嘩してしまっている感じがします。

古色(こしき)

普通、工芸品は出来た時が最も価値が高く、時間と共に劣化・変化したものはマイナス要因になりますが、日本の器はそれがプラスに転じます。

李朝前期の粉引は、本来白一色の清潔感ある陶器ですが、時間ともに入るシミを、雨漏りを呼び愛でる感覚を日本人は持ちます。

終わりに

細金さんが一目惚れした備前焼の器

この記事でご紹介したのは本当にさわりの部分でしかありませんが、少しでも興味を持っていただけたでしょうか?

写真だけだと伝わり切らないかもしれませんが、実際に細金さんが持ってきた器を見ながら聞くと、とてもリアルですごく勉強になりました。

細金さん曰く、食卓に並べる器ひとつとっても「毎日の生活をいかにして彩るかが人生の質を大きく分ける」と言います。

仕事も、毎日忙しくてバタバタしている人よりも、感性が鋭く豊かで心にゆとりのある人の方が、クリエイティビティの高い仕事をしそうですよね。

僕も自分の家に、安いやつでもいいので、日本の美を感じるような器を置いてみようと思いました。

※この記事の写真の一部は、なんでも鑑定団の番組から引用しています。

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